2019年34冊目。

内田樹氏が編集した平成論。
トップバッターの内田氏は「平成とは日本の国運が隆盛から衰退に切り替わった転換期だった」と断じる。対米関係において、米国への従属から抜け出すことを目的として国民が活動していた昭和の隆盛が、平成では従属に腰を落ち着けてしまったために国運が衰退に転じた、との論。しかし令和になり、トランプ大統領や出現や韓国・イランなどの暴挙の影響で、この従属状態から抜け出せる芽が出てきているように私には見えます。
ブレディみかこ氏は、日本の女性はふつふつとした怒りのもとで日々を生きている、と言う。性差別に怒りながらも一つにまとまることのない女性達や、変わらない社会に対するふつふつとした怒り、これにはなんとなく共感する。
平川克美氏は、平成は新たな階級としての「消費者」を生み出した。ひとりの時間を大切にし、誰からもその行動を干渉されず、好きなときに好きなものを自由に所有することができる人達。確かにその通りだが、これも近頃はフードロスなどの観点から見直しの芽が芽生えつつあると思う。
そして小田嶋隆氏、自分がどうしたいかとか、自分が何を欲しているかよりも、自分がどう見られたいかであったり、他者が自分に何を期待しているのかを行動基準とするようになった。つまり日本人は、平成の30年間を通じて、単なる個人であることから、より大きい集合の中の一員であることにアイデンティティーを置く「群れ」の中の人間に進化してしまった、と断じる。構成主義のマイナス面ですね。この傾向が強化されて行くと、人間はアルゴリズムで生きていることになりかねません。

そんなこんな、あれこれと考える種を提供してくれました。