少し前に、日本語の「シリコンバレー式ずけずけ言う力」という本を「読む必要はない本」と評価した。しかし、その原書「Radical candor」はNYタイムズ紙のベストセラーなので、いったい何がおかしいのかと思い原書を取り寄せて、ざっと読んでみた。コーチングをマスターしている人にとっては改めて読む必要はないが、新任のマネージャーやコーチングを学びたいと思う人にとっては有益な内容だった。

原書を読んだ結果分かったこと。
1.日本語版の表紙と帯の文言が酷い。
 ・ずけずけ言う(無遠慮または無愛想にものを言うこと:広辞苑より)という表現は原書には出てこない。おそらく日本語訳本にも出てこない。なのに、表紙にでかでかと書いてある????
 ・「おまえの仕事はダメだ」「あなたがバカに見える」という発言は、スティーブ・ジョブズがある文脈の中で言ったことで、しかもジョブズはこの一言で片付けてはいない。それなのに帯だけを見ると、この一言をはっきり言うことが良いと言っているように思える。(そんなバカな)

2.「Candor」の日本語が「本音」になっているが、日本人が感じる本音が持つ語感とは、かなりずれがある。
 ・「本音」(本心から出た言葉、建前を取り除いた本当の言葉:広辞苑)
・「Candor」(Frankness or sincerity of expression. Freedom from prejudice:American Heritage)

3.第六章「フィードバック文化の作り方」の内容は素晴らしい。
 ・上司としてフィードバックをもらう、部下にフィードバックを与えて気づきにつなげる、そんな心理的安全を感じられる組織を作る。そのために効果的なTipsが載っている。

訳者は一部を除いて、ほぼ忠実に日本語にされています。(Candor の訳語が?、Guidanceが指導になっていたり、上司と部下が逆になったいたりする箇所はありますが)
こんな事態を招いたのは、この本の編集者と発行責任者なのでしょう。

良い本が誤解されてしまう装幀にしてしまいました。実に残念なことです。