2019年30冊目。
 
エッセイストとしての藤原正彦氏が、週刊誌のコラム欄に書き綴った「管見妄語」の集大成が本になった。タイトルは「狭い見識からのでまかせ」であるが、勿論そのようなことはない。数学者としての論理思考と実証主義から、現在の世相を厳しく見つめ、それを父母譲りの文章力によって(父は新田次郎、母は藤原てい)軽妙洒脱に書き綴っている。
 
「ポリティカル・コレクト」政策の採用によって起こった世界の大きな変化、それによる弊害が、欧米を覆い、日本にもその影響を与えている。これがまずいことに気づいた結果のブレクジットであり、極右勢力の台頭であり、トランプ大統領の誕生であるとの管見、いや卓見である。ポリティカル・コレクトの「弱者優遇こそ正義」という主張は、「誰が弱者なのかの定義が難しい」ことと「弱者をどれ位優遇するのかの程度判断が難しい」ことに問題があるとの宣託。
 
たしかに行き過ぎた弱者優遇が、様々な弊害を生んでいる。
トランプが仕掛けている米中貿易戦争が、米国の貿易赤字の解消のみが目的ではないことを知っている日本人がどれ位いるのだろうか?