2019年21冊目。

名著です。半藤一利氏の著作活動の集大成でしょう。

昭和初期の不景気から、支那事変、満州国建国から大東亜戦争に至り、開戦直後の連勝から形勢逆転して終戦に至るまで、民草(庶民)や社会がどのように変化していったのかを中心にして、政治・経済の動きを周縁にして書かれていて、国民の心が構成的にどのように変化していったのかが分かります。

半藤氏は1930年生まれなので、節目節目で自分がどんなことを考えていたのか、何を感じていたのかについて書かれているのを読み、同じ年生まれの亡父が、どのようなことを考え、感じていたのか、語ろうとしなかったことを想像することが出来ました。

あとがきに「歴史は繰り返す」と題して「人々の政治的無関心が高まると、それに乗じてつぎつぎに法が整備されることで権力の抑圧が強まり、そこにある種の危機が襲ってくるともう後戻りは出来なくなる・・・(中略)・・・そして同調する多くの仲間が生まれ、自分たちと異なる考えを持つものを軽蔑し、それを攻撃することが罪と思われなくなる・・。」とあり、今まさに日本でこういった状況が芽生えつつあるのではないかとの危惧を持ちました。保守と革新、右と左、親米と新中などなど、双方の考えを聴いて理解し、自分の考えを確固としたものとして持つ、そんなことが重要だとの思いを強くしました。