2020年読了11冊目。

マルクス・ガブリエルの本のなかで、この本は彼へのインタビューを元に書き起こされているので、言葉が平易で比較的分かりやすい。分かりやすいだけに刺激も多く、「あっ」と思った箇所に付箋をつけて読んだら、膨大な数の付箋が付いてしまった。

読み終えてから振り返ると、彼はポストモダンによる人間社会のシステムの終焉を唱え、ネオリベラリズムが世界に与える悪影響を主張し、リアルとヴァーチャルの境界が曖昧になっている現代において、「新しい実在論」の必要性を主張している。「新しい実在論」は人間の行為主体性についての新しい概念である。ガブリエルが別の著作で展開している「新実存主義」は「新しい実在論における人間の行動原理のこと」である。

人間は物事に対して様々な視点を持つが、その視点が全て善ということも全てが悪ということもない。ただし人間は「自分の思考は正しいと思っている」ので、自分の持つ視点から離れることは難しい。自分の視点から離れることができれば、人間は自らを正していくことができるようになる。

統計的な世界観は、だいたい正しいことの集まりにしか過ぎないので、社会が間違いを犯す可能性を上げることになる。

情報が溢れ、その中に埋没してしまいそうな状況で、確固とした自分を持つ。そのためのヒントに溢れた本でした。