2021年読了1冊目。
米国大統領選にまつわる混乱、新型コロナ対応について噴出する様々な意見、恐怖心を起こさせ、論争を引き起こそうと画策するかのようなマスコミの報道、こんな状況を経験してドミニク・チェンが読みたくなった。

「特定の言語グループに属する人間にはその言語に固有の現実世界が立ち上がる」国単位に限らず、地方の単位、会社や家族などの組織の単位でも、それぞれに固有の現実世界があるわけだから、この世の中は「わかり合えないこと」で満ちている。

「表現行為は、決して作者のうちに完結しない。そうではなく、受け取り手が表現された領土を自由に探索し、そこから新しい価値を自らの領土に取り込む運動を通してはじめて、成立するのだ」いかなる表現も表現された瞬間、その作者の手を離れて自由に動き出す。このダイナミズムが人間社会の素晴らしさのはずなのだが、マイナスの方向に使われてしまうケースが増えている。

「結局のところ、世界を「わかりああえるもの」と「わかりあえないもの」で分けようとするところに無理が生じるのだ。そもそも、コミュニケーションとは、わかり合うためのものではなく、わかりあえなさを互いに受け止め、それでもなお共にあることを受け入れるための技法である」個人個人の気持ちや解釈や指向で色づけされた情報が溢れかえる世界で、それらの受け止め方としての正道だと思う。

今年はこれからどんな本に出会うだろうか。良いスタートだというのは間違いない。