2020年読了24冊目。
「社会の重大問題をどう解決するか」についてノーベル経済学賞受賞者が書いた本。
扱っている重大問題は「移民」「自由貿易」「好き嫌いによる社会の分断」「経済成長」「気候変動」「不平等の拡大」「政府不信」「救済と尊厳」の8つ。
経済学者の視点はユニークで、自分の視点を増やすことができる。
「あっ」と思った視点を列挙しておく。
 
「好みについて議論すべきではない」話し合いの場に自分の好みを持ち出す人がいる。これについて反論したり、賛成したりする必要はない。これだけで話し合いがかなり楽になるだろう。
「偏向したソースを選ぶ選択肢を与えられると、ユーザーは党派色が薄れる傾向にある。これに対して(自動的に)選ばれたニュースだけを受け取ったユーザーは、そうはならない」GAFAの操り人形にならないために、この視点は重要だ。
「GDPは値段がついていて販売できるものしか対象にしない」日本のGDPの伸びが低いという問題提起をよく聞く。日本の成長の分野はサービスや観光など値段がつかないものだから。
 
「富裕国で答えを探すべき問は、どうすればもっと富裕になれるかということではなくて、どうすれば平均的な市民の生活の質を向上できるか、ということではないだろうか」「富裕国の成長率を少しだけ上げる方法を躍起になって探すよりも、最貧層の幸福にフォーカスすれば、何百万人もの生活を根本的に変える可能性が開けてくる」
これが最も感心した提案。日本の現状をついている。小泉改革から始まった格差拡大による貧困の増加、中流の減少、ここに日本政府が取り組まなければならない点がある。安倍政権が行った雇用増は非正規が中心だったため、コロナ禍により崩壊した。菅政権はどういう手を打つのだろうか。竹中平蔵氏だけは表に出てこないことを祈る。
 
「取り憑かれたように成長を目指すのはやめるべきだ」「成長の収穫を一握りのエリートが刈り取ってしまえば、成長はむしろ社会の災いを招くだけである」成長によるトリクルダウンが起きないということが分かった今、取り組むことは何だろう?
「社会政策の設計においては、救済をすることと人々の尊厳に配慮することのせめぎ合いにどう対処するかということを常に考えないといけない」政府が行う救済は人の尊厳を踏みにじる形のものが多い中で。市民レベルの救済(子ども食堂やタイガーマスクランドセルなど)は素晴らしいおこないですね。
この本、良い本です。