2020年読了23冊目。
オンライン研修が本格化して忙しい中で、平成という時代を振り返るためにと思って読んだ。
文藝春秋に掲載された文の中から、半藤一利氏が選んだ31本が掲載されている。その中で「あっ!」とか「おお!」とか思ったことを並べてみたい。あくまでも個人の主観による感想です。
 
平成八年(1996年)山崎正和「黒白ジャーナリズムが面白ジャーナリズムに変貌し、劣化している」・・・この傾向はさらに強く、これにジャーナリストの功名心や視聴率崇拝、新聞業界のコストカットによる取材力低下が絡んで、ますます劣化しているのが今ですかね。
 
平成三年(1991年)城山三郎「わからないことは発言しない-これも本田宗一郎さんの一貫した姿勢でした」・・・SNSでわからないのに発言している人が多いなぁ。
 
平成四年(1992年)盛田昭夫「あなたたちは我々と競争のルールが違うのだ」「日本を見る欧州の目は実に厳しいもので、各界からの声高な日本批判は連日のように世界のマスコミを賑わしています」「日本は世界各国とは相容れないルールを持つ特異な国として日本異質論が展開されています」・・・日本独自の人事制度や労働環境について、欧米から変更を迫られたことで、成果主義導入や休日増などの改悪を生み、それがバブル崩壊後の長期低成長につながり、ついには小泉改革による非正規化を招くことになった、その流れがよくわかりました。
 
平成十八年(2006年)後藤正治氏「ワーキングプワで若者から夢や希望が聞かれなくなった。それは寂しいだけではなく、今が危うい世であることを指し示しているのではないか」・・・人をコストとしてみる経営は多大なる害悪を及ぼしている。中国から引き揚げた企業に国が報奨金を出す制度ができたが、これによって省コストを第一とする経営が少数派になれば良いのだが。
 
平成二十九年(2017年)前川喜平氏「農水省や厚労省が、新たな獣医学部設立が必要だという材料を出さないまま、新たな大学設置の許認可権を持つ文科省だけに早く認めろといわれても筋が違います」・・・見事な縦割りかつサイロ行政ですね。
「安倍政権下では官邸の力が益々強まっているようにも思うのです」・・・サイロを壊し縦割りに横串を通すためには強い力が必要で、それを官邸が行っている。これを役人側から見れば、官邸からの圧力が強いとなり、忖度や保身、あるいはリークやデマを生み出す傾向が強くなる、安倍おろしの原動力はここにあったのかもしれません。
 
平成を振り返ると、産官民すべてが劣化していった時代だったと思えました。