菊山博之が交流を深めた方々に時代の最先端から見つめていることについてインタビューします。
第1回目のお客様はNTT西日本電信電話株式会社 常勤監査役 香取一昭さん。
ホールシステム・アプローチについてお話を伺いました。

関係性を変えることが重要視されてきている (2)

菊山
関係性の変化を要求するニーズが出てきたのでしょうか。

香取
要するに、立場とか権力によってどうこうという状況は少なくなって来ている。多様性を持った様々な立場の人が貢献しあって、組織を動かして、結果を出していかないと、望ましい結果が得られない、そういう時代になって来ているということですね。

菊山
そうすると、経営者やリーダーに求められるのは、そこで働いている社員の人たちがどんな関係で仕事をしているのか、という点にまず注目し、その関係性を好ましいものに変えていく、ということを十分に意識して組織改革を進める、ということでしょうか。

香取
「現場力を強くする」とか「自律的な組織をつくる」とかいうことが、経営課題として取り上げられたりしますが、実際、どうやってつくるかということは、あまり語られていないですね。この具体的方法が、もしかすると、ホールシステム・アプローチに代表されるような創造的ファシリテーションなのではないかと思うのです。つまり、リーダーに求められているのは、組織の構成員が自己組織化能力を最大限生かせるような「環境作り」ということなのです。

菊山
ある消費者問題関連の仕事をする中でこんなことがありました。悪質商法にひっかからないようにする啓蒙活動を、たくさんの方がボランティアでされているのですが、この活動の中でリーダーをしてこられた方というのは、似ているのです。悪徳業者と渡り合うことが多いので、主張する力があって、意志も強くて。しかし消費者は、タイプが全く違う人たちなので、活動がうまくつながらない。要するに、関係性の質があまり良くないわけですよね。リーダーは、「こういうのに引っかかっちゃダメだよ」「ちゃんと読まなきゃダメだよ」と話をしたり、ロールプレイをしたりするのです。ところが聞いている人たちは、その人たちとは異質の人たちなので、「それは分かるけど・・・。でも、実際に来たら帰れとは言えないし」と感じたままでいる。関係の質が「上から」と「下から」で切れてつながっていない。そこで、リーダーの人たちにコーチングをして見せたのです。そうすると「これは、私にとても必要なスキルかもしれない」と気づいた人が何人もいました。消費者もそうですが、新しく活動に入って来た人が続かないことに悩んでいたというリーダーは、今までの自分のやり方ではついて来られない人がたくさんいるのだ、ということに気づいたと話してくれました。自分と一緒に働く人たち、一緒にボランティア活動をしている人たちに対して、こういうアプローチをするといいのかもしれませんね、と。これも、「関係の質を変えるということで、結果が変わる」ということなのだと思います。

香取
そうですね。あと一つは、相手の立場で考えるということが大切だと思います。

菊山
「相手の立場で考える」とはよく言うのですが、実際はどうなのでしょう。相手の立場に身を置いて考えていますよ、と言うのですが、考えら後に出てくる対策
というのが、結局、自分だったらこうするよ、とか、こうすべきだよ、というのが出てくるので、やっぱり上から下へ、ですよね。それでコーチングという方法は重要だな、と感じられたのでしょう。コーチングに消費者が来て、騙されそうな高齢者の人たちが来て、リーダーが中心になって、これからどのように行動しようかというテーマをAIとかOSTで行うといいのかもしれないですね。それで、関係の質が変わって、みんながこれからこうやって行こうというような感じで考えて帰ってくれて、悪徳業者に騙されることがなくなる。