菊山博之が交流を深めた方々に時代の最先端から見つめていることについてインタビューします。
第1回目のお客様はNTT西日本電信電話株式会社 常勤監査役 香取一昭さん。
ホールシステム・アプローチについてお話を伺いました。

関係性を変えることが重要視されてきている (1)

菊山
香取さんは経営者の立場で仕事をしておられました。(注:NTTメディアスコープ社長 2001年6月~2004年6月)その時は、ホールシステム・アプローチはなかったと思うのですが、あの頃は、どんなことを実施されたのですか。

香取
実はやったのです。ワールドカフェをね。毎年2回開催する全社員大会の大半の時間をダイアログの時間に当て、そのダイアログのやり方として、ワールドカフェを使いました。

菊山
そのような大規模なダイアログを実施されて、会社の中の雰囲気は変わりましたか。

香取
変わります。ワールドカフェを実施して、痛切に感じるのは、みんな話したい、というか、会話を楽しみたいという想いが非常に強い、ということですね。しかもそれは、時間を決められて極端に枠にはめられた話し方、話し合いをするのではなく、会話を楽しみながら自由な話し合いで課題を解決したいという想いなのです。

菊山
例えば上司部下の関係もないし、何の利害関係もないところで自分の言いたいことを話せる、そういう環境で話がしたいということですよね。

香取
そういう状況を作り出すのは実に難しい。だから、「安全な器」が大事なのです。安全な器作りが出来るところで、こういった話し合いに入っていかないと成功しません。去年、日本ファシリテーション協会開催で、130人位のワールドカフェを実施したのですが、その中に、権威主義的な参加者がいて、この話し合いは非常に居心地が悪かったと後で本人から聞きました。こんなところで何を話していいかわからないと。自分がオープンになれなかったのですね。

菊山
みんなオープンなので、居心地が悪い。(笑)なるほどねぇ。

香取
私が前の会社で組織変革に取り組んだ時に、最初に手がけたのは、このような関係性のあり方です。

菊山
オープンな、何でも話して大丈夫だという関係性にしていく。そうするとかなり結果が違って来ますよね。表面的には同じ結果が出ていても、心の中は随分違いますよね。

香取
そうです。そんな関係性を作り出すために、ダイアログという話し合いを紹介して始めたのです。ダイアログ自体が、単なるテクニックというのではなく、むしろ、関係性のあり方について、同じ認識を共有するためのアプローチなのですね。

菊山
そうすると「関係性を変える」ということは非常に大事なことだと言えますね。コーチングしていても、コーチングは結局、二人の関係性を変えることにつながっているのではないか、と最近思うのです。上司が一方的に話していた関係性から、部下の話をきちんと聴いて、ああそうか、そういう考え方もあるね、と理解してあげる。それで部下が自分で答えを考え出すという関係に変わりますよね。関係性が変わると、同じ結果を出していても、その過程や当事者の心の中には随分と違うものが出てくる。やはり今の世の中には、関係性を変えて結果を変える、ということが必要になって来ている。

香取
関係性のあり方が変わって、思考が変わり、思考が変われば、行動が変わり、行動が変われば、結果が変わるといわれています。

菊山
そういうことですよね。AIも実は関係性の変化を意図している。

香取
そうですね。